認知症って何?症状・原因・治療法までわかりやすく解説

認知症予防

認知症は、高齢者にとって誰にとっても他人事ではありません。
しかし、その症状や原因、治療法は意外と知られていません。

このブログ記事では、認知症について分かりやすく解説します。

認知症とは


認知症

認知症は、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態になる病気です。
主に高齢者に多く見られますが、若年層にも発症することがあります。
早期発見と適切な対応が重要です。

認知症の初期症状

認知症の初期症状は、日常生活に支障をきたすほどではありませんが、次のような変化が現れます。

記憶の抜け落ち
もの忘れ
いつもよりも物事を忘れやすくなる。
時間や場所の感覚の喪失日常慣れ親しんだ場所が分からなくなったり、時間の感覚がなくなる。
言葉遣い適切な言葉が出てこない、言葉が重複する。
判断力いつもよりも判断力が鈍る、簡単な判断ができない。
行動いつもと違う行動をとる、衝動的な行動をとる。

もの忘れとの違い

高齢になると、誰でも多少の物忘れは経験します。
特定の出来事や情報は忘れたりしますが、思い出すことができます。

しかし、認知症の場合、思い出せなかったり新しい情報を覚えられない等、次のような特徴があります。

<認知症の特徴>

  • 進行性:症状が徐々に悪化する。
  • 日常生活への支障:日常生活に支障をきたすほど忘れる。
  • 他の症状:もの忘れ以外にも、様々な症状が現れる。

早期発見のポイント

認知症は早期発見・早期治療が重要です。
次のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 日常生活で上記の初期症状があり気になる。
  • 家族や友人がいつもと違う変化に気づいた。
  • 家族に認知症患者がいるなどで認知症のリスクが高い。

認知症の症状と進行速度


認知症

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状」の大きく2つに分けられます。

中核症状(認知機能低下)

中核症状は、認知機能の低下によって引き起こされる症状です。

見当識障害時間や場所、人物に対する認識が曖昧になり、自分が誰なのか分からなくなる症状
記憶障害最近の出来事をすぐに忘れる、過去の出来事を思い出せないなどの症状
実行機能障害計画を立てたり、手順通りに実行する能力が低下し、行動が難しくなる
判断力・理解力の低下日常の判断や理解力が低下し、適切な行動が取れなくなったり、簡単な文章を理解できなくなる
失行・失認・失語動作がうまくできない、物を認識できなかったり使い方が分からなくなる、言葉が出てこない、顔や名前が分からなくなるといった症状

周辺症状(BPSD/行動・心理症状)

周辺症状は、認知症の進行に伴って現れる行動や心理的な変化です。

不安・抑うつ不安感や抑うつ状態が強くなります。
徘徊無目的に家の中を歩き回ることが増え、外に出ようとします。
幻覚・錯覚現実には存在しないものが見えたり聞こえたりします。
暴力・暴言攻撃的な言動や行動が見られ、暴言を吐いたりすることがあります。
睡眠障害眠れずに夜中に何度も起きたり、昼夜逆転が起こります。
物盗られ妄想・せん妄自分の物を盗まれたと感じて訴えたり、現実と妄想の区別がつかなくなるせん妄状態が見られます。
介護拒否介護を拒否したり抵抗する態度が強まります。
常同行動同じ行動を繰り返すことが増えます。
不潔行為自分で排泄ができなくなり衛生的でない行動が目立つようになります。
食行動異常食事に関する異常な行動(極端な偏食や拒食)が見られます。
性行動異常不適切な性行動が現れることがあります。

認知症の進行速度は、個人差が大きいです。
ゆっくりと進行するものもあれば、急速に進行するものもあります。

認知症の原因となる疾患、それぞれ症状・治療法について解説


認知症

認知症の原因となる疾患は様々です。
主な疾患と、それぞれの症状・治療法を以下に紹介します。

アルツハイマー型認知症

認知症全体の約60~70%を占める最も一般的な認知症です。
脳内の異常タンパク質の蓄積(脳内のアミロイドβとタウ蛋白質)が異常蓄積する事が主な原因と考えられています。

進行性の疾患であり、根本的な治療法はなく、治療は主に薬物療法と認知療法で症状の進行を緩和することを目的とされているようです。

脳血管性認知症

認知症全体の約10~20%を占めると言われています。
脳卒中、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症します。

脳卒中の症状に加え、認知機能障害が現れるため、血圧管理や血栓予防が重要です。

生活習慣の改善や薬物療法で、脳卒中の再発予防と認知機能の維持・改善を目指す治療が行われます。

レビー小体型認知症

認知症全体の約5%を占めると言われています。
レビー小体と呼ばれる異常タンパク質が原因で、幻視、パーキンソン病と類似の認知機能障害の症状が現れます。

進行性の疾患であり根本的な治療法はないとも言われていますが、治療には薬物療法や非薬物療法が用いられ、症状の進行を緩和するように行われています。

前頭側頭型認知症(ピック病)

前頭葉と側頭葉が萎縮することによって発症すると考えられています。
性格や人格変化、言葉の理解・発話障害など行動異常が目立ちます。

これも進行性の疾患であり、根本的な治療法はないと考えられています。

治療には薬物療法や非薬物療法が用いられ、症状の進行を緩和するように行われています。

パーキンソン病

脳内のドーパミン神経細胞が減少することが原因と考えられています。
振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害などの運動障害に加え、認知症を伴うことがあります。

進行性の疾患であり、根本的な治療法はないと考えられています。

ドーパミン補充療法や薬物療法や手術療法で、症状を改善する可能性もあります。

内分泌・代謝性中毒性疾患

糖尿病、甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症などが原因で発症することがあります。
認知機能障害に加え、その他の症状も現れる場合があります。

まずは基礎疾患の治療が必要で、治療により認知機能が改善することがあると言われています。

感染症

エイズ、梅毒、脳炎や髄膜炎などの感染症が原因となることがあります。
認知機能障害に加え、その他の症状が現れる場合があります。

感染症の治療が最優先です。
原因疾患の治療により、認知機能が改善する場合があります。

外傷性疾患

脳挫傷、脳出血など頭部外傷が原因で発症することがあります。

認知機能障害に加え、その他の症状が現れる場合があります。
外傷の外科的治療やリハビリが重要で、治療によって症状が改善する可能性があります。

嗜銀顆粒性認知症など、その他の認知症

上記以外にも、様々な原因で認知症の症状が起こると言われています。
症状や治療法は、原因疾患によって異なります。

目の動きやバランスの問題が主な症状の進行性核上性麻痺、運動障害や認知機能の低下が見られる大脳皮質基底核症候群、神経細胞内の異常タンパク質蓄積が原因の神経原線維変化型老年期認知症、神経細胞内の嗜銀顆粒の蓄積が特徴の嗜銀顆粒性認知症が挙げられます。

認知症診断の流れ


認知症

認知症の診断は、病院によっては異なる場合もありますが、主に次のような検査が行われます。

問診(面談)認知機能や日常生活の様子について、医師が患者や家族から聞き取り
神経心理検査記憶力、注意力、判断力などの認知機能を評価するためのテストを行う
神経学的検査脳神経の機能をや反射を調べる検査
画像検査CT検査やMRI検査で、脳の状態を画像化して確認
血液検査認知症の原因となる疾患がないか、内分泌異常や感染症を確認する検査
その他の検査心理検査や脳波検査など、必要に応じて追加検査を行う

認知症治療について


認知症予防

認知症の治療には、次のような方法があります。

1.治療可能な認知症

原因疾患の治療により、認知機能が改善することがあります。

2.進行予防

アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの進行性認知症は、根本的な治療法がないと言われています。
しかし、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、節酒など生活習慣の改善や読書、パズル、音楽鑑賞など脳を活性化するような新しいことにチャレンジする事やリハビリ・薬物療法で進行を遅らせたり、予防することが可能と言われています。

3.周辺症状に対する治療

認知症の周辺症状には、薬物療法や非薬物療法による治療があります。

薬物療法抗精神薬、抗うつ薬、睡眠薬など
非薬物療法音楽療法、アロマテラピー、認知行動療法など

4.生活・介護上の注意点

認知症の症状は人によって様々ですが、生活・介護においては、安全と快適さを確保することが重要です。認知症の患者さんを支えるために、環境、生活、サポート方法や専門家と連携の面から具体的な対策のヒントをいくつかご紹介します。

1)安全な環境の整備

手すり・安全対策

転倒やケガを防いだり、徘徊や火災対策を行います。

ケガのリスクを減らす対策●家具の角を丸くする
●滑りにくい床材にする
●手すりを設置する
●段差をなくす
●夜間照明を明るくする
●誤飲防止のため、薬や洗剤を手の届かない場所に置く
徘徊対策●ドアにカギを付ける
●GPS機能付きの機器を持たせる
●洋服等、身に着けるモノに名札を付ける
火災対策●コンロの火の元を止める
●消化器を設置する
●煙感知器を設置する

2)生活リズムを整え・ルーティンを維持

生活リズム

規則正しい生活リズムを維持することで、症状を悪化させることを防ぎます。

 ●毎日同じ時間に起床・就寝する
 ●規則正しい食事をとる
 ●適度な運動を取り入れる
 ●趣味や好きな活動を取り入れる
 ●毎日同じ順番で行動する

3)本人の意思を尊重するようにサポート

サポート
 ●できるだけ本人の意思を尊重し、自分でできることは自分でさせて自立を支援する。
 ●選択肢を与え、本人が決断できるようにする。
 ●できないことは無理強いせず、代わりにサポートする。
 ●意見や気持ちを否定せず、共感的に話を聞く。

4)専門家との連携

サポート
 ●主治医やケアマネージャーと定期的に連絡を取り、状態や介護計画について相談する。
 ●認知症に関する専門家からの情報やアドバイスを得る
 ●介護教室や介護サポートグループに参加する。

5)その他、役立つ情報

 ●認知症に関する書籍やウェブサイトの情報も参考にしましょう。
 ●地域の行政機関や介護サービス事業者に相談しましょう。
 ●認知症患者さんとのコミュニケーション方法を学びましょう。
 ●介護者自身の心身の健康にも気を配りましょう。

まとめ


認知症予防

認知症は早期発見と適切な治療が重要です。
症状や進行状況に応じた対応を行い、患者とその家族の生活の質を向上させることが大切です。
「いつもと違う」と気が付いたら、できる限り早めにお近くの医療機関や介護施設に相談し、専門家の助けを借りることをおすすめします。

認知症患者さんとの生活は、決して楽ではありません。
しかし、工夫次第で、安全で快適な暮らしを送ることができます。
大切なのは、患者さんのことを理解し、尊重すること、そして専門家と連携することです。
一人で抱え込まず、周りの人に助けを求めるのも大切です。
困ったことなどがあればご相談ください。
一緒に歩んでいきましょう。