認知症のリスクが気になる方、最近物忘れが気になってきた方は、「MCI」という言葉を聞いたり見たことはありませんか?
「MCI」は、Mild Cognitive Impairmentの略称で、「軽度認知障害」と訳されます。
加齢による記憶力低下とは異なり、日常生活に支障が出るほどの認知機能の低下が見られますが、認知症ほど進行していない認知症の前段階とされる状態です。
認知症ほど深刻ではありませんが、早期発見・対応が重要です。
この記事では、MCIの症状、原因、最新の治療法、生活習慣改善による予防策など、MCIに関する情報をご紹介します。
軽度認知障害(MCI)とは
厚生労働省による軽度認知障害の定義
軽度認知障害(MCI)は、記憶や認知機能に軽度の障害が見られるが、日常生活に大きな支障をきたさない状態を指します。
厚生労働省では、MCIを「認知機能の低下があるものの、まだ認知症と診断されるほどの重篤な状態ではない」と定義しています。
軽度認知障害の症状
MCIの主な症状には、主に以下のような症状がみられます。
記憶障害 | 最近出来事や約束を忘れる よく同じことを尋ねる 必要な物をよく、なくす 新しい情報を覚えるのが難しい |
判断力・思考力の低下 | 複雑な判断や意思決定が難しい 問題解決能力が低下する |
注意・集中力の低下 | 注意力が散漫になる 集中力が続かない |
視空間能力の低下 | 時間や場所の感覚が薄れる |
言語障害 | 適切な言葉が見つからない 言葉が出てこない |
遂行機能障害 | 計画を立てたり実行したりするのが難しい物の整理が難しくなる |
医療機関での診断には、詳細な問診や認知機能検査が行われます。
自己診断のチェックリストも役立ちますが、正式な診断は専門医に依頼することが重要です。
軽度認知障害(MCI)と認知症の違いは?
MCIと認知症の主な違いは、日常生活への影響の程度です。
MCIは、認知症と比べて症状の進行が緩やかなので認知機能に軽度の障害が見られるだけで、認知症ほどの深刻な影響はありません。
また、MCIの段階では、認知トレーニングや生活習慣の改善など適切な対策を講じることで進行を遅らせることが可能です。
MCL | 認知症 | |
認知機能の低下 | 軽度 | 中等度~重度 |
日常生活への影響 | 軽度 | 支障あり |
認知症への移行リスク | 高い | ーーー |
軽度認知障害の原因
MCIの原因は完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関係していると考えられています。
加齢 | 年齢を重ねることで脳の神経細胞が減少したり、機能が低下します。 |
遺伝的要因 | 家族に認知障害の歴史がある場合、リスクが高まります。 |
生活習慣 | 不健康な食生活、運動不足、過度のストレスなどが原因となることがあります。 |
その他の健康状態 | 糖尿病や高血圧などの慢性的な病気、うつ病などの精神疾患も影響を与えることがあります。 頭部外傷による発症。 |
軽度認知障害(MCI)の兆候は?セルフチェックしてみよう
MCIの早期発見は、進行を抑制し、認知症の発症を遅らせるために重要です。
以下は、MCIの兆候の症状です。
□ 1.最近の出来事や約束を忘れやすくなった
□ 2.言葉が出てこなくなることが増えた
□ 3.計画や判断に時間がかかる
□ 4.家事や仕事が以前よりも難しくなった
□ 5.道に迷いやすくなった
□ 6.家族や友人か変化に気づいて指摘される
これらの項目に、一つでも該当したり心当たりのある方は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
軽度認知障害が疑われる場合はすぐに病院へ
MCIの兆候がある場合は、早めに専門の医療機関を受診することが重要です。
早期発見と適切な治療が進行を遅らせる鍵となります。
軽度認知障害の診断
◆MCIスクリーニング検査
医療機関では、MCIスクリーニング検査を行います。
MCIの診断には、認知機能を評価するためのスクリーニング検査が用いられます。
例えば、MMSE(Mini-Mental State Examination)などの検査が一般的です。
◆検査の流れ
1.<問診>症状や生活習慣について詳細の聞き取りがあります。
2.<認知機能検査>記憶力・注意力・言語力・計算能力などの認知機能を評価する検査を行います。
3.<画像診断>CT検査やMRI検査で脳の画像を撮影し、脳の萎縮や脳血管障害などを確認します。
4.<血液検査>認知症の原因となる病気を調べる場合もあります。
◆検査結果について
MCIの診断は、上記のような検査結果に基づいて総合的に判断されます。
必要に応じて追加の検査や専門医の診断が行われます。
MCIと診断されたらどうする?
MCIと診断された場合、進行を遅らせるための治療や生活習慣の改善が推奨されます。
定期的な医師のフォローアップも重要です。
MCIの根本的な治療法は確立されていませんが、症状の進行を抑制したり、日常生活を維持・改善したりするための治療法はあります。
軽度認知障害の進行対策
食事
バランスの取れた食事は、脳の健康を維持するのに役立ちます。
特に、DHAやEPAを多く含む魚介類、ビタミンB群を含む豚肉やレバー、脳のエネルギー源となるブドウ糖を含む果物などを積極的に摂取するといいでしょう。
また、抗酸化物質を豊富に含む緑黄色野菜、果物、ナッツ類なども推奨されています。
血管の健康を維持するために、塩分や飽和脂肪酸の摂り過ぎを控え、カリウムや食物繊維を多く含む食品を摂取することもおすすめです。
運動
定期的な運動は、血流を改善し、脳の健康を保つのに効果的です。
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を週に3~5回、30分以上行うと、脳の血流を改善し、神経細胞の活性化を促進するので有効と言われています。
転倒予防にも効果的なバランス運動や筋力トレーニングを取り入れることで、脳への血流も改善されるでしょう。
脳トレ
脳を活性化するためには、読書やパズル、計算などの脳トレーニングが有効です。
クロスワードパズルや数独、新しい外国語学習や楽器の演奏などが脳トレに効果的なアクティビティとして知られています。
<脳トレに効果的なアクティビティ>
クロスワードパズル、数独、ジグソーパズル、将棋や囲碁、楽器演奏、ダンス、絵画、書道、料理、旅行 など
コミュニケーション
社会的なつながりを維持することは、精神的な健康を保つために重要です。
友人や家族との交流を大切にしましょう。
家族や友人との会話、地域活動への参加など、積極的に人と交流したり、旅行、趣味活動、ボランティア活動など、新しいことに挑戦するのも、脳を活性化すると言われています。
口腔機能の改善
口腔の健康も認知機能に影響を与えることがあるため、定期的な歯科検診と口腔ケアが推奨されます。
よく噛む食事を心がけたり、歯磨きやデンタルケアを徹底し、口腔内を清潔に保つことが大切です。
軽度認知障害(MCI)を早期発見と予防について
軽度認知障害(MCI)の早期発見の重要性
MCIは、根本的な治療法は確立されていませんが、早期発見・早期治療によって進行を抑制し、認知症の発症を遅らせることが可能です。
MCIの兆候がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
ぜひ、定期的な健康診断やセルフチェックを行いましょう。
軽度認知障害が改善・進行を防ぐことは可能なの?
適切な治療や生活習慣の改善により、MCIのリスクを低下させたり進行を遅らせたり、場合によっては改善することも可能です。
軽度認知障害(MCI)の予防
予防策として、健康的な食事、定期的な運動、脳トレ、社会的な交流が重要です。
また、ストレス管理や十分な睡眠も予防に寄与します。
規則正しい生活 | 十分な睡眠、適度な運動、バランスのとれた食事 |
脳の活性化 | 読書、パズル、新しいことに挑戦するなど、脳を活性化する活動を行う |
ストレス解消 | ストレスを溜めないように、趣味や人と交流する時間を設ける |
生活習慣病の予防・管理 | 糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を予防・管理する |
定期的な健康診断 | 定期的に健康診断を受け、MCIの早期発見・早期治療につなげる |
まとめ
軽度認知障害(MCI)は、早期発見と適切な対策により、その進行を遅らせることができます。
日頃から日常生活の中でできる予防策を取り入れ、健康な脳を維持する意識を持つことが重要です。
自分自身や家族がMCIの症状に当てはまるのではないかと心配な場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
もしMCIと診断されたとしても、決して恐れる病気ではありません。
家族や医療専門家と連携し、適切なサポートや治療と生活習慣の改善によって、症状の進行を抑制し充実した生活を送ることができます。
※この記事はあくまでも情報提供を目的としたものであり、医療診断や治療に代わるものではありません。MCIの症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。